日記とメンタルヘルス:研究からわかっていること

書く習慣が役に立つことはありますが、平均的な効果はたいてい小さく、人によって違います。日記が治療になるわけではありません。

「日記はメンタルヘルスによい」と言うと単純に聞こえますが、その中にはさまざまな方法と結果が混ざっています。研究の参加者は、つらい経験について決まった指示どおりに書くこともあれば、感謝の手紙を書くことも、ふつうのできごとを記録することもあります。科学的にもっといい問いは、どんな書き方が、誰に、どんな条件で、どれくらい役立つのか、です。

研究者が実際に調べていること

臨床研究の多くが扱っているのは、自由な毎日の日記ではなく、エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)です。参加者はたいてい、ストレスになったできごとにまつわる考えや気持ちについて、時間を決めて数回書きます。この方法の結果を、そのままあらゆる日記に当てはめることはできません。

ほかにも、ポジティブな内容を書く、感謝を書く、決まった形で自分を記録する、といった方法を調べた試験があります。書く内容、期間、対象者、比較するグループがそれぞれ違うので、ひとつの平均値の裏に大きな違いが隠れていることがあります。

平均的な効果はどれくらいか

2022年のシステマティックレビューは、不安、うつ、心的外傷後の症状に対する日記の介入について、20のランダム化研究をまとめました。小〜中程度の効果がある可能性を見いだした一方で、研究ごとのばらつきの大きさと方法上の限界も強調しています。

ところが、エクスプレッシブ・ライティングのランダム化試験を対象にした2009年のメタアナリシスでは、心と体の健康への有意な平均効果は見られませんでした。特定の人にとって役立つ可能性は否定されませんが、誰にでも効くという約束はできないということです。

研究によって結果が違う理由

同じ質問でも、ある人には支えになり、別の人には負担になることがあります。健康な成人を対象にしたランダム化試験では、エクスプレッシブ・ライティングは不安やうつに全体としての効果を示さず、結果は参加者がふだん感情をどれくらい表に出すかによって変わりました。

テーマ、安心感、できごとからの時間、支えてくれる人の有無、結果の測り方が、どれも影響します。書いた直後に一時的にいやな気持ちが強まることと、長く状態が悪くなることも別のものです。

エビデンスから言えること

日記は、手軽に自分を観察できる道具であり、根拠のあるケアを補うものになりえます。経験を言葉にしたり、文脈を残したり、専門家に聞きたいことを準備したりする助けになるかもしれません。ただし、診断ではなく、心理療法や医学的な治療の代わりにもなりません。

いちばん正確なまとめは控えめなものです。書く習慣には、人や方法によっては小さな効果があるかもしれません。でも現在のエビデンスでは、誰にでも改善を約束することはできません。

科学的な出典

リンク先は元の論文や科学的なレビューです。研究の結果とその限界を自分で確かめられます

  1. Efficacy of journaling in the management of mental illness: a systematic review and meta-analysis Sohal M, Singh P, Dhillon BS, Gill HS. Family Medicine and Community Health, 2022.
  2. Health effects of expressive writing on stressful or traumatic experiences: a meta-analysis Mogk C, Otte S, Reinhold-Hurley B, Kröner-Herwig B. GMS Psycho-Social-Medicine, 2009.
  3. Randomized controlled trial of expressive writing for psychological and physical health: the moderating role of emotional expressivity Niles AN, Haltom KEB, Mulvenna CM, Lieberman MD, Stanton AL. Anxiety, Stress, & Coping, 2014.